『Fate/Grand Order -終局特異点 冠位時間神殿ソロモン-』
公開記念舞台挨拶オフィシャルレポート

7月30日(金)から全国劇場にて特別上映中の『Fate/Grand Order -終局特異点 冠位時間神殿ソロモン-』の公開を記念し、8月7日(土)に舞台挨拶が実施され、主人公・藤丸立香を演じる島﨑信長さんをはじめ、高橋李依さん、川澄綾子さん、鈴村健一さん、坂本真綾さんという豪華キャスト陣が登壇いたしました。
そのトークイベントの模様をお届けいたします。
※本レポートは作中のネタバレを含みますので、本編ご鑑賞後にご覧ください※

本編上映後に登壇したキャスト陣。まずは完成した映像を観た感想について、藤丸立香役・島﨑さんは「(TVアニメ)バビロニアからずっと素晴らしいものを作り続けてくださったスタッフの皆さんに感謝ということは間違いないのですが、あとはなんて言ったらいいのかわからない……よかったなあというのが正直な感想です」とコメント。マシュ・キリエライト役の高橋さんは「この終局特異点を描かないとFGOのアニメ化をやりきったとは言えないと思っていたので、一段落というか、走りきった感はすごくあります」、フォウを演じた川澄さんは「藤丸とマシュが今まで出会った人の思いを全てのせてがんばっている姿に、なんてたくましくなったんだろうと、もうお母さんのような気持ちで“この空を見られてよかったね”って思いました」と語ります。
レオナルド・ダ・ヴィンチ、そしてジャンヌ・ダルク、アレキサンダーと今作で多彩なキャラクターを演じた坂本は「いろんな役柄の視点で皆の旅を見守ったり助けたりと、大事な場面で彼らの力になることができてすごく嬉しかった。いちお客さんとして観たときには、一つの物語の中にいくつもクライマックスがあって、大団円の華々しさがすごく印象に残っています」と作品の印象をコメント、またロマニ・アーキマン役の鈴村さんは「ロマニはここ(終局特異点)にたどり着くことが目標であり、これはマシュと藤丸の物語であることは間違いないんですが、もう一つ流れていたこととしてロマニの物語でもあったのかなということが今回の映像に詰まっていたと感じます。実はゲームFGOの僕の最初の収録はソロモンというか魔神柱からだったので、最後はここに来るということは多分声優陣の中では誰よりも早く知っていたと思うんですが、だからこそ“いよいよ来たな”という思いが強いです」と感慨深く語ります。

TVアニメ「絶対魔獣戦線バビロニア」のスタッフが制作した本作。収録を振り返って島﨑さんは「この状況下なので収録は少人数でそれぞれ行われたんですが、バビロニアで築いてきたキャスト同士のチームワーク、そしてスタッフの皆さんへの信頼もあったので、ばらばらでの収録だったんですが何も心配なくお芝居できた」とTVシリーズからの制作チームならではの安心感を語ると、ソロモン役の杉田智和さんと一緒に収録したという鈴村さんは「実はソロモンは声が2つ重なっているんですけど、最初に収録したときは僕の声はなしでいこうという話だったのを、後日やはり合成しようとなって後で収録したんです。杉田くんがとても自由にお芝居されていて、それを耳で聴きながら録って、それがすごく難しくておもしろかった。でも精度高くできたんじゃないかと思っているので、完成した音を聴いて、僕の成分もう少し増やしてくれてもいいのにとちょっと思いました(笑)」と収録裏話を明かします。
島﨑さん、高橋さんと3人での収録だったという川澄さんの「ずっと2人の収録を見させてもらってきましたが、長く続いている「Fate」シリーズの新たな主人公やヒロインという立場はきっと重圧もあっただろうなと思います。藤丸とマシュ2人の姿を重ねるような気持ちで見守っていました」という言葉に島﨑さんは「本編の感想になっちゃうんですけど、僕が一番泣けたのはエンディングのフォウくんの言葉で。ゲームでもあった言葉ですが、収録時にはどう表現されるのか知らなかったので完成した映像を観て、川澄さんがフォウくんとして見守ってくださったからこそグッときました」と答えます。

3役を演じた坂本さんは「ダ・ヴィンチは美しい女性の姿をしてますけどどこか中性的で年齢もよくわからない、不思議な包容力のあるキャラクターで、私も非常に気に入っている役。彼女のあまり偏らない、皆を大事にしていてどっちが正義とか悪とか言わないでいるスタンスというのが素敵だなと思っていて、そんな彼女が最後にロマニを回想する場面は私が先に収録したので実際にはロマニの声は聴こえなくて、私の中だけに聴こえる声を回想しながら録ったのが逆によかったなと思いました。やっぱりダ・ヴィンチにとってロマニはとても大事な存在だったんだなとすごく感じて、素のダ・ヴィンチを感じられるシーンでした」とダ・ヴィンチについて語り、さらに藤丸たちを助けに現れるサーヴァント・アレキサンダーとジャンヌも演じたことについて「いや~おいしいところで出てきましたね」と笑顔を見せると鈴村さんから「やばいってなると何回も出てくるよね」というコメントも。「アレキサンダーがこんなにフィーチャーされると思っていなくて、かっこよくて嬉しかった。ジャンヌの演説のセリフはゲームFGOが始まる前のPV用に収録したものと同じ言葉で、初めてFGOの世界に触れたときのセリフなんです。でもあのときとはこちらの思いも違うというか、物語を追ってきてここで現れるジャンヌがこの場で語りかける意味というものが全然違って感じたので、同じセリフを時を経て演じられたのはよかったです」と明かします。
島﨑さんからの「これだけキーになる場所で同じ役者さんが重要な役をやってらっしゃって、でも真綾さんって声を作って違うように音を聞かせようとかじゃなくて、芝居で全然違う人に聞こえるなって改めてすごいなと感動しました」という言葉に客席からも拍手がわくと、「いやいや、完成した映像を観て“あーもう、私の声ばっかり聞こえる……”って」と言う坂本さんに対して「子どもの頃観ていた野沢雅子さんの、親とその子ども兄弟が皆違うキャラクターに聞こえるっていう感覚と同じですごいなって!」と重ねる島﨑さんに、坂本さんが「声大きいな!(笑)」とつっこみつつ「ありがとう、ありがとうね」と返す賑やかな場面も。

本作のキーパーソンであるロマニを演じた鈴村さんは「後半シーンで藤丸くんのもとに現れるところは本当にかっこよくて、思い入れたっぷりに演じに行ったつもりなんですけど、そうするとロマニっぽくないな……とかいろいろなことを思いながら、あくまで自然にいつもどおりに言うことが大事だなと。その後のソロモンの立ち回りも、もっと大きいお芝居でと考えて行ったんですけど、そうではなくロマニであるということを残しておくお芝居がいいというディレクションもいただいたので、フラットというかシームレスなつもりでお芝居しました。今回のお話はソロモンの物語でありつつロマニの物語なんだということがちゃんと表現できればという思いを持って挑んだつもりです」と収録時の思いを語ります。様々な英雄が登場するFGOシリーズにおいてロマニ同様にいち人間である藤丸を演じる島﨑さんからの「ロマニも藤丸もとても人間くさい人で、でもロマニは藤丸以上にいろいろなものを背負っていたり経験があったりする人だったんですけど、だから先ほどのディレクションのお話を聞いて、どこまでも人間だったのがすごいなって思わされました」という言葉に「普通の人間なんだよね」と答える鈴村さん。

Fateシリーズで様々なサーヴァントの声を担当している川澄さんは今回フォウを演じたことについて「最初にフォウくんを演じた際は今作のエンディングで明かされるような存在だとは知らなくて。でもただのマスコットであるわけはないなと思っていたのですが、第一部の物語の終わりでフォウくんのこともきちんと描いて終わらせていただけて、そんな存在をアニメで演じられて光栄でした。“フォウ”だけしか言葉を発さない役はプレッシャーでしたが、バビロニアの時からフォウくんの造形や動きが素晴らしくて、ただかわいいだけじゃない獣らしい動きもすごく丁寧に描いてくださっていたので、演じていてとても楽しかったです。一番最後のフォウくんの声は悩みました。“キュ”という短い音だけでどう表現すればいいのか……でもそれも、赤井監督をはじめ制作してくださっている皆さんが繊細な動きで表現してくださったので、隅々まで配慮されて愛があるなと改めて感じました」と語ると、「今までフォウさんとはキャッチボールができていた感覚があったんですけど、あの“キュ”ってなんかそこで止まっちゃうんですよね」と受けた高橋さんに「ありがとう。でも恥ずかしいです。“キュ”だけだったので……。 帰って反省します……」と照れる姿も。

デミ・サーヴァントとして藤丸とともに各特異点を旅してきたマシュについて高橋さんは「マシュは成長してるなとずっと思っていたんですけど、終局特異点を演じてみて、自分の感性であったりというよりかは、マシュが“こう見せたい”と感じている彼女に私が近付いていったというか。ああ、マシュってこうだったよねと最後に納得するような終局特異点になったと思います」と語ります。感情の起伏の少ないEpisode0のマシュから今作までを演じたことについて「気合が入りすぎるシーンほど気合を抜いてくださいとディレクションをいただいて、最後にマシュが振り向くところなんて特に気合が入っちゃったんですけど、彼女の思いを考えると、最後に先輩にどんな笑顔を見せていたいかって思うと、一人の少女として振り向くんだろうなって。自分の肩の力がいかに無駄なものかっていうのを本当に痛感しました」と振り返ります。
アニメオリジナルの礼装を身に着けて最終決戦に挑んだ藤丸について島﨑さんは「根本はずっと変わらないんです。いろいろな英雄の背中や人々の生き様を見ていって一生懸命自分にできることはないかと考えてきて、それらの経験を少しずつ積み重ねている子だなと思っているので、今回終局特異点だから大きく変わったということはなく積み上げてきたものがこの状況だとこうなるよね、という前提で。でもやはり最後の戦いだからと用意された装備を身に着けて、そんなものをダ・ヴィンチちゃんに用意させてしまうという申し訳なさもあったりして、ここまでカルデアのスタッフたちが彼が人間でいられるように守って支えてきてくれたので、だから変わらずにいられたなと感じています。“多くの人たちに助けられ、多くの人たちの代わりにここにいる”という言葉、そして“生きるためだ”というのが彼の行動原理です。僕たちキャストは今日もこうして皆さんの前に立たせてもらっていますが、アニメーションってそれぞれの分野のプロフェッショナルが集まって、それぞれにできることを精一杯やって戦っていい作品を作り上げるというもので、そういう環境がカルデアとも重なって、藤丸として立つことができた、そんな現場でした」と熱く語りました。
最後に、お一人ずつご挨拶と“ロマニに一言伝えるなら”というテーマでコメントをいただくことに。

「個人的には、いいところで『色彩』のメロディが聞こえてくるのがすごく嬉しかったです。あの歌詞を書いたとき、ここを目指してやってきたというのが、長い年月を経てこうして映像として皆さんに届いて、グッとくるものがありました。ぜひ何度でも観て楽しんでいただきたいと思います。
ロマニ、おつかれさん」(坂本さん)

「ロマニの声をずっとやらせていただいてきましたが、これでお別れなんだなと思うと本当に卒業のような気持ちになってしまいますね。でもここを目指してずっとやってきたキャラクターで、最初にアニメ化の企画が始まったときからここにたどり着くことが一つの目標だったので、たどり着けたということが本当に素晴らしいこと。たくさんの人たちがここに導いてくださったんだなと思うので、僕は声だけでの参加ですが本当に誇らしく思います。……ロマニに一言って僕が言うのはどうなんだろうな(笑)
いつ戻ってきてもいいんだぜ」(鈴村さん)

「自分がゲームをプレイしていたときにいろんなサーヴァントが来てくれてすごく心強く、素敵な旅をしてきたんだなって思ったんです。それが今回出来上がった映像で魔神柱に立ち向かうサーヴァントたちを観たときに、それをもっとすごいパワーで思い知ったというか、立体的な映像と音楽やSEによって心強さと絆の強さ、“今までの旅ありがとう”という思いをより強く感じました。本当に素晴らしい作品になったと思うので、そんな作品にフォウくんとして参加できて嬉しく思います。ありがとうございました。
ロマニには、本編でも話しかけてるけどあのとき何を言ってたかは言えないので、でもフォウくんは全部知ってたんだなということで……おつかれさまでした」(川澄さん)

「今作で演じさせていただくことによって、私の中でもマシュという存在が鮮明になって、彼女はこういう佇まいでこういう一言を選ぶんだというのがすごく新鮮で、演じさせていただいている身ではあるんですけど“マシュ、ここにいたんだ”みたいに感じられたのがこの終局特異点でもあります。ぜひともいろんな目線でこの作品を観ていただきたいんですけど、マシュの言葉や表情を1個1個受け止めて、今後のマシュ像みたいなものを頭の中で一緒に想像していっていただけたらなと思います。
ロマニに言葉を伝えるとしたら……お父さんみたいな距離感だなと思っていて。私はまだ自分の父親にちゃんとありがとうって言えてなくて、でもそういうことを言える年齢になってきたんだなって……だから言えるときに言っておけばよかったって……ありがとうございます」(高橋さん)

ここで涙する高橋さんに「なんだか僕の引退式みたいになってるけど違うからね、ロマニに対してだからね」とつっこむ鈴村さんに「そうです、鈴村さんは現役です!」と高橋さんが答え会場が笑いと温かい拍手に包まれるなか、最後に島﨑さんからのご挨拶をいただき公開記念舞台挨拶は終了しました。

「カルデア詠唱についてや、ゲーティア戦の描写など、話したいことはいっぱいあるんですけど、今出てくるのは“よかったな”とか“楽しかったな”という気持ちだけで。TVシリーズのバビロニアからずっと地続きでソロモンまでたどり着いて、バビロニアチームからのソロモンチームとして一段落なんだというのが寂しい思いです。いい役者さんたち、いいスタッフさんたちと本当にいいチームでお仕事させていただいたなと感じています。台本のト書きであったりキャラクターの表情にもスタッフさんの細かいところまで愛がすごくて、たくさん観ていただきたいです。胸を張って、何度でも観てほしい素晴らしい作品ができました。今後ともFGOソロモン、そしてゲームもよろしくお願いします。ありがとうございました!
作品は作品で完成しているので、僕がキャラに何かを伝えるのはなしで! ひとり言で、ありがとうございます、とだけ!」(島﨑さん)