ここがすごいぞFGO 終局特異点 冠位時間神殿ソロモン レポート Special

田中美海 × 赤羽根健治

あのふたりが帰ってきた! TVアニメ『Fate/Grand Order 絶対魔獣戦線バビロニア』で「ここがすごいぞ!TVアニメ『FGOバビロニア』」宣伝大使を務めていた田中美海(ニトクリス、ワルキューレ・オルトリンデ役)と赤羽根健治(カドック・ゼムルプス、渡辺綱役)が再集結。アニメ『Fate/Grand Order ‐終局特異点 冠位時間神殿ソロモン‐』の応援に駆け付けた! ふたりが見た『終局特異点 冠位時間神殿ソロモン‐』の見どころを振り返る「ここがすごいぞ!」対談。いよいよ開幕!
本編の重大なネタバレを含みますので、本編鑑賞後にご覧下さい

――アニメ『Fate/Grand Order ‐終局特異点 冠位時間神殿ソロモン‐』が、スマートフォン向けRPG『Fate/.Grand Order』6周年を迎える2021年7月30日に特別上映を開始しました。おふたりは、こちらをご覧になっていかがでしたか? まずは、率直な感想をお聞かせください。

赤羽根 本当に約90分に、よくまとめてくださったなと思いましたね。

田中 本当に! ありがとう! と感謝したいです。

赤羽根 実は、今回あらためて原作ゲームの終章をプレイし直したんです。終章って意外とめちゃくちゃ長いんですよ。

田中 そうなんですよね。

赤羽根 よくこれをまとめてくださったなと。赤井(俊文)監督をはじめ、奈須(きのこ)さんや多くの方の尽力で90分に収めてくださったんだろうなと思うと、すごいなと素直に驚きました。

田中 もともとは30分×2のTV特別放送を考えていらっしゃったそうですね。でも、そこにさらに30分プラスして、劇場で上映するものにしてくださった。本当にありがたいです。

赤羽根 90分にまとめつつも、我々が観たいと思っているシーンは詰め込んでいただけた。これを観て、ようやく第1部が終わった! という気持ちになりました。

――これからアニメ『FGO 冠位時間神殿ソロモン』について振り返ろうと思いますが、まずは、おふたりの印象に残っているシーンをお聞かせください。

赤羽根 そうですね。やっぱり数多の英霊たちがジャンヌの旗の下に流星の如く集うシーンは、原作ゲームをプレイしたときから、アニメで観たら感動するんだろうなと思っていたんです。実際に観たら、本当に感動しちゃいました(笑)。サーヴァントが来てくれたーっ! って。スタッフさんから伺った話ですと、当初の想定よりも、登場したサーヴァントの数が相当増えたらしいですね。田中さんはどのシーンが印象に残っていますか?

田中 原作ゲーム『FGO』では、第二部でまだ大変な戦いが続いている最中じゃないですか。それを踏まえて、アニメ『ソロモン』を観ると、ロマニやダ・ヴィンチちゃんの言葉がすごく胸に刺さって。とくにダ・ヴィンチが藤丸くんを「成長した」と認めるシーンの笑顔が、『Fate/stay night』に通じるものを感じて。『Fate』シリーズなんだなとあらためて感じました。印象に残っているシーンはやっぱり、最後にソロモンが出てくるシーンです。あそこは泣きました!

赤羽根 泣きましたねえ。泣けると言えば、マシュの最期も泣きました……。原作ゲームだとかなりマシュにスポットを当てて、マシュが生きてきた意味を描いているんですが、アニメ『ソロモン』だとゲーティアを演じている杉田智和さんのモノローグが多めなのもすごくおもしろいところだなと思いましたね。アニメならではの解の見せ方をしてた感じがありましたね。

――アニメ『FGO 冠位時間神殿ソロモン』を冒頭から振り返っていきたいのですが、冒頭は、魔術王ソロモンの物語から始まりしたね。

赤羽根 原作ゲームでは『終章』のアバンタイトルはマリスビリーとソロモンの会話シーンから始まるんですが、アニメではマリスビリーががっつり姿を見せているんです。

田中 マリスビリーカッコいい!

赤羽根 僕はカドック(・ゼムルプス)をやっているからかもしれないですけど「お前ェ……!」と思っちゃいました。マリスビリーがここで出てくる意味、みたいなものを『Fate』シリーズオタクとしては考えてしまいましたね。

田中 たしかに! マリスビリーとソロモンは、ほぼ無傷で聖杯戦争に勝っているじゃないですか。街は廃墟になっているけど、どんな聖杯戦争だったのかなって気になりました。

赤羽根 ソロモンの圧勝だったんでしょうね……。

田中 そんな聖杯戦争もあるのか……って。

赤羽根 しかも、珍しくちゃんと願いを叶えている聖杯戦争ですからね。マリスビリーは巨万の富を得て、ソロモンも願いをかなえて……。

田中 キレイな聖杯戦争(笑)。

赤羽根 ド頭から情報量が多すぎました。

――今回、オリジナルのマスター礼装(極地消耗型・七天礼装)を装備して、藤丸は終局特異点へ向かいます。マスター礼装の印象はいかがでしたか。

赤羽根 極地消耗型・七天礼装……ぶっそうな名前ですねえ。これまでは生きてかえってくるための礼装だったけれど、今回は脳と心臓さえ動いていればいいみたいな。

田中 究極の礼装ですよね。

赤羽根 倒すための礼装ですよね。以前、ふたりでアニプレックスさんの番組(“Aniplex Online Fest 2021「「Fate/Grand Order ANIME PROJECT」Special Program」)に出させてもらったときに、この礼装を見せてもらって「原作ゲーム『FGO』に実装されると良いですね」なんて軽く言っていたんですけど、神経を削ってサーヴァントを召喚するというエグい礼装で、これは実装できないよなと。

田中 この礼装を藤丸に渡すときにダ・ヴィンチちゃんが「こんなの正気じゃない」って自虐的に言うじゃないですか。でも、藤丸は間髪入れずに「ありがとう」って返すんですよね。ダ・ヴィンチちゃんの気持ちもわかったうえで、みんなを傷つけないために「ありがとう」って言っている。今回の藤丸は、『Fate』シリーズの主人公らしい、一線を越えてしまっている感を感じるんです。衛宮士郎(『Fate/stay night』主人公)に似ているというか。藤丸も『Fate』シリーズの主人公なんだなと感じて、ちょっとゾゾっとしました。

――藤丸は限界が迫るマシュを出撃させないように働きかけます。マシュと藤丸の関係をどのように受け止めましたか。

赤羽根 アニメ『FGO』のEpisode 0 「Initium Iter」から観ていると、本当に胸に刺さるんですよね……。

田中 マシュはいろいろな言葉を、これまで戦ってきた特異点で出会ったサーヴァントや人たちからもらって、少しずつ成長をしているんですよね。藤丸もきっとマシュは「出撃したい」と言うんだろうなとわかっているから、辛いですよね。

赤羽根 マシュを連れていかないと、ソロモンには勝てないと藤丸もどこかできっと感じていて。それでも「カルデアに残ってほしい」と藤丸は口にしている。一方、マシュはそれもすべてわかったうえで「だからどうか、最後までお供させてください、マスター」と言っているんです。

田中 すべてをわかったうえで、マシュは笑顔なんですよね。

赤羽根 ねえ……。

――物語は終局特異点へ。魔神柱があちこちでうごめく宇宙的な空間になっていましたね。

赤羽根 終局特異点はソロモンの神殿ですけど、原作ゲームをプレイしたときには、魔神柱がたくさん存在しているから広大な印象があったんです。アニメではどんなふうになるんだろうなと思ったら、魔神柱がうごめく空間になっていましたね。

田中 うにょうにょ動いてましたよね。すごい気持ち悪かった(笑)!

赤羽根 そうそう。魔神柱ってそういう感じで生えてるんだって思いました。

田中 禍々しさというか、おどろおどろしいというか。嫌悪感みたいなものがすごく掻き立てられて。でも、それが大正解ですよね。藤丸くんたちは、よくあの場にいられるよなって思いました。私があの場に行ったら、足がすくんで何もできないと思うんですよ。

赤羽根 あと、魔神柱から、ああいうふうに生えるのねレフ教授、って思いましたね(笑)。

――藤丸は自らの神経を削って召喚ボルトを使用し、サーヴァントを召喚します。サーヴァントの顔ぶれはいかがでしたか?

赤羽根 藤丸くんと同じマスターの立場として言わせていただきますと。召喚の口上のセリフを言えるのは本当にうらやましい! (島﨑)信長くん(藤丸立香役)も「詠唱は台本を読んだ段階から高まりまくりました」とツイートしていましたけど、わかる……わかるんですよ!

田中 『FGO』オリジナルの召喚詠唱ですよね。あれはカッコいい。

赤羽根 召喚の口上は、全マスターあこがれのセリフです。そうしたら、まさかのアレキサンダーから。メタ的なことをいうと、とりあえず(坂本)真綾さん(アレキサンダー役)から登場するんだなと(笑)。藤丸が召喚するサーヴァントは、すごくシブいラインナップなんですよね……。

田中 アレキサンダーとか、(シャルル=アンリ・)サンソンとか、ヴラド三世[EXTRA]とか。

赤羽根 原作ゲーム『FGO』のプレイヤーとしては、終局特異点は☆4、☆5のサーヴァントで攻めると思うんです。でも、今回の藤丸はレアリティ関係なくサーヴァントを召喚するんだなと。藤丸はマスターとして、優秀なんだなと思いましたね。

田中 たしか、原作ゲームでは、終局特異点のクエストで絆レベル5以上のサーヴァントに攻撃ボーナスが付く「絆レベルボーナス」があったんですよね。藤丸くんはきっとサーヴァントと結んでいる絆レベルが高いんだろうなと感じました。

赤羽根 ああ、そうなんですね。僕はリアルタイムで終章をプレイしていない勢なので、そこだけは体験出来なかったことが悔やまれます。。

田中 あと、今回サンソンの宝具「死は明日への希望なり(ラモール・エスポワール)」を見れたことが、とても印象的でした。あと、私はヴラド三世[EXTRA]が好きなので、宝具「串刺城塞(カズィクル・ベイ)」を観られて嬉しかったです。めちゃカッコよかった!

赤羽根 演出的に対・魔神柱向きの宝具ですよね。

――ここからは先ほど赤羽根さんが印象的なシーンのひとつとして挙げていた、自らの意思で集まったサーヴァントたちと魔神柱の戦いになります。

赤羽根 やっぱりここからは熱くなりますよね。しかも、この各拠点の戦いのあと、ソロモン(ゲーティア)の前に魔神バアルの人間体が登場するんですよ。エキセントリックなイケメン感があるという。これを観ると、え、次は新宿(1.5部「亜種特異点Ⅰ 悪性隔絶魔境 新宿 新宿幻霊事件」)やるの? って思っちゃいますよね(笑)。

田中 そうですよね。「新宿」をアニメ化したら、「終章」に出てたじゃん! って思いますよね。

――ここから時間神殿の中で決戦が始まりますね。

田中 目が追い付かないくらいのバトルでしたね。

赤羽根 今までの特異点の代表格のサーヴァントたちが集まるシーンは熱かったです。

田中 藤丸くんは相当深い縁をサーヴァントと結んだんだなと思いましたね。縁が深いからこそ、終局特異点まで来てくれたんだなって。

赤羽根 婦長(ナイチンゲール)もカッコよかった! ゲーティア相手に肉弾戦で挑むんだなと思いましたね。婦長は普段、涼しい顔をしている印象があるんですが、その婦長から「クッ」という顔を引き出す、ゲーティアシンプルに強いなって思いました。あの表情変化もアニメならではの見どころです。あと、ネロとモードレッドという赤セイバー同士の共闘にテンションがあがりましたね。

――ゲーティアは第三宝具として光帯を展開します。田中さんも先ほど、マシュの最期を印象的なシーンのひとつとして挙げていらっしゃいましたが、おふたりはどのように受け止めていましたか。

田中 『FGO』ファンみんなのトラウマになっているシーンだと思うんです。映画になった以上、どこかで来るだろうとは思っていたんですけど、映像になると辛かったですね。音もすごかったです。

赤羽根 原作ゲームでも「色彩(第1部主題歌)」のオルゴールアレンジが流れていたんですよね。今回の映画だと、モノローグを杉田さんがされていることでゲーティア(レフ)はマシュに結構寄り添っているんだなと感じました。

田中 マシュは自分の命の終わりが近づいていることも、ここで第三宝具を受け止めたら自分が消滅するということもわかっているんですよね。今まで生きていく意味や、戦う意味を悩んでいたと思うんですけど、それでも笑顔で盾を構える。やっぱり藤丸くんへの感謝が彼女を動かしているんだろうなと思いましたね。

赤羽根 自分の最期だから、どこかに悲嘆とか後悔とか、混ざりそうなものなんですけど。一瞬もそういった感情を入れていない。自分が原作ゲームのテキストを読んでいたイメージ通りで。高橋(李依)さん(マシュ・キリエライト役)のお芝居込みで素晴らしいシーンだなと思いました。

田中 わかります。悲しい感情を少しだけ入れたくなっちゃいますけど、そうじゃないんですよね……。

赤羽根 僕らも、藤丸といっしょに「マシュ―!」って叫びたくなりますよ(笑)。

――そして満を持してロマニ・アーキマン―——(ロマン)が時間神殿に登場しますね。

赤羽根 ここはロマンの心情を思うと、すごく重いシーンだと思うんです。たとえば、マシュが消滅する前にロマンがゲーティアの前に出ようと思えば、出られたと思うんです。もっと早く決断すれば、そうすることもできた。でも、ロマンはそれができなかったんですよね。一秒でも長く、人間でいたかった。それでも、マシュが消滅して、それを受けて、見届けたからこそ、最後の覚悟を決めたんだと思うんです。

田中 そうなんですよね。彼はかつて聖杯戦争に勝利して人間になった瞬間に終わりをみてしまって。最後に発揮した人外的な能力で、人類の最期を知ってしまったんですよね。そのときから、彼は人間である時間を楽しむこともできず、ずっと人類の歴史が止まらぬように走り続けてきたわけで。

赤羽根 皮肉ですよね。人間になる瞬間に、ソロモンとしての能力・千里眼で世界の結末を知ってしまったわけですから。ロマンは自由を得たはずなのに、自由を得ていなかったんですよね。

田中 人間になりたいと思ったのに、人間になりきれなかったんですよね。それで人理を修復するためにカルデアにやってきて、マシュと出会い、藤丸くんと出会った。人間であろうとするロマニの本心は、もしかしたらマシュに重ねていたのかもしれえないですよね。

赤羽根 ロマニが、終局特異点にソロモンとして姿を見せる瞬間まで、彼は人間らしい葛藤をしていたんでしょうね。

田中 藤丸くんやマシュへの情があって、想いがあって、藤丸くんとマシュのために、ソロモンに戻るんですよね。それなのに「いやいや、そこはちょっと落ち着こうよ、藤丸くん」といつものドクター・ロマンらしく出てくるところが憎いんですよ!

赤羽根 原作ゲームのテキスト通りのセリフだったときに、うわーって思いました。このあたりは藤丸も選択肢どおりのセリフだったりするんです。原作ゲームをプレイした人は、感慨が深いシーンだったんじゃないでしょうか。ゲームのセリフをそのままにして、アニメとしてきちんと成立させるとは。アニメ制作スタッフのすさまじい作り込みを感じました。

――ついに最終決戦。藤丸が魔力を放出して、ゲーティアに勝負を挑みます。

田中 まさかの巌窟王(エドモン・ダンテス)登場。

赤羽根 「共犯者」を呼ぶとはねえ。

田中 原作ゲーム『FGO』においては、巌窟王って特別な立ち位置ですよね。藤丸の中にいる存在ですからね。それがここで助けに来た!? みたいな驚きがありました。

赤羽根 ここは原作ゲームとアニメでがっつりと変わっているところなんですよね。原作ゲームだと、このあと藤丸がゲーティアを殴って終わるんです。アニメでは、藤丸がゲーティアのもとにたどり着くまでに、さらにもうひとバトル入っている。

田中 ダビデが召喚されるのには驚きました。お父さん(ダビデはソロモンの父)呼んじゃう? って。

赤羽根 スカサハめっちゃカッコよかった! 魔神柱が紙のようだ!って思いました。あと、牛若丸も。もうここまで来たら、牛若丸には触手特攻みたいなスキルをつけてほしいです!

田中 第七章「バビロニア」のゴルゴーン戦でも触手みたいな蛇と戦ってましたもんね。

赤羽根 そうそう。ここで(風魔)小太郎を出してくれたのは嬉しかったです。原作ゲームでは、最後の魔神柱(廃棄孔アンドロマリウス)のときに、セイバー両儀式とか、沖田(総司)さんとかといっしょに出てくるんですよ。ここで小太郎が出てきて、人選に思わず唸っちゃいました。そして、アステリオスが藤丸を投げる。

田中 ここの劇伴が、原作ゲーム『FGO』のラストバトルを思わせる、『色彩』のアレンジ版だったのは嬉しかったですね。ちょうど曲が盛り上がるところでアマデウスが指揮棒を振っていたりして、戦いの中にもいろいろな要素が散りばめられているなと思いました。

――そして最後は人王ゲーティアと一騎打ちです。この戦いをおふたりはどう見ましたか。

田中 やっぱり『Fate』シリーズの最後は殴り合いですよ! 『Fate』は殴り合い。

赤羽根 『Fate』は殴り合い(笑)。今を生きる人たちが最後を決めるんですよね。

田中 やっぱり『Fate』シリーズは、人間にフォーカスを当てる作品なんだなと思います。

赤羽根 最後は、現在を生きる人間に委ねるんですよね。

田中 腕を失った人王ゲーティアが、泥臭い戦いを藤丸くんと繰り広げるのが、すごく生々しかったですね。ゲーティアも憎めないんです。

赤羽根 ゲーティアのモノローグで構成されているのがまた良かったですね。

田中 ゲーティアの言っていることに納得しちゃうんです。

赤羽根 そうなんですよね。これはあくまで偶然ですけど、このご時勢の状況にゲーティアの言葉を聞くと、なぜか納得できるところがあるというか。『Fate』シリーズって勧善懲悪じゃないですからね。敵側のやっていることは惨忍に思えるけれど、彼らのバックボーンを踏まえると、そうせざる得ない理由が見えてくる。そこが『Fate』シリーズのすごさであり、奈須きのこさんの魅力だと思います。

田中 原作ゲームの終章の選択肢をいまだに覚えているんです。「生きるためだ」という選択肢を選んだとき、そうか……そうだよな! って気持ちになったのはすごく印象に残っています。

赤羽根 誰もが大変なことってあると思うんですけど、でもその中にも、絶対にひとつの光のようなものがあって。そのひとつがあるから「生きる」ことができる。『Fate』シリーズってそういうテーマをずっと描いていると思うんです。奈須さんの書かれるシナリオには、たまに「人の心!」って思うときもあるんですけど(笑)、でも、どこかで「生きる」ことは尊いことなんだということが基盤としてあるんですよね。

田中 死ぬことって怖いことですよね。でも、生きているからこそ、いろいろな輝きがあるし、一層輝くこともできる。自分の人生にも落とし込むことができるんです。頑張っても、頑張らなくてもいいから、もうちょっと「生きてみよう」って。人生を応援してくれる作品でもあるなって思います。

――アニメ『FGO 冠位時間神殿ソロモン』を見終わったときはどんなお気持ちでしたか。

赤羽根 不思議と高揚した感じはありませんでした。静かに、終わった、という感覚がありましたね。

田中 見届けた、という感じでしたね。

赤羽根 ようやくひとつの終着点にたどり着いたんだなと。いろいろな章をアニメ化して、ここにたどり着いたんだなと。僕は戦っていないけれど、戦った感があります。

田中 「Eternity Blue」を最後に流していただけて、青空の風景と合う楽曲だなあとあらためて思いました。

赤羽根 「Eternity Blue」が流れはじめて、いろいろなことを考えてしまいましたね。

田中 そうそう、いろいろな思い出がよみがえりますよね。こんな素敵な作品を作ってくださって、ありがとうという気持ちになりますね。

赤羽根 そうやって思いを馳せていたら、エンディングに思わぬ演出があって、最初戸惑ってしまいました(笑)。ぜひ、エンディングの演出も楽しんでほしいですね。

――アニメ『FGO 冠位時間神殿ソロモン』ではたくさんのサーヴァントが登場します。今回100騎近くのサーヴァントが登場しているそうです。おふたりがご覧になって嬉しかったサーヴァントは?

田中 私が演じているニトちゃん(ニトクリス)が出ていたのが、サプライズすぎて嬉しかったです。

赤羽根 スカサハとか、アルテラとかは出ていて嬉しかったですね。スカサハは原作ゲームだと李書文先生と競い合うようなかたちで登場するんです。きっと師匠(スカサハ)は先生(李書文)の思いも背負って登場してくれたんじゃないかと勝手に解釈してます。アルテラも宝具を使っているところを観られて嬉しかったです。アニメの宝具演出はこうなるんだなと。とても見ごたえがありました。

――アニメ『終局特異点 冠位時間神殿ソロモン』はまだまだ公開が続いております。この作品を、どのように楽しんでほしいと思っていますか。

田中 映像としてすばらしい作品なので、素敵な音響と大きなスクリーンでご覧にいただいて、感情をぐちゃぐちゃにしていただきたいです。オリジナルの礼装が出てきたり、新しい要素がたくさんあって。それらが全、また次につながっていくのかなという期待感があります。2016年の年末のあのとき、みんなで戦った証を、この作品を通じて受け取ってほしいなと思っています。ここでしっかりとまとめてから、第2部に行きたいですよね(笑)!

赤羽根 『終局特異点 冠位時間神殿ソロモン』は、アニメ化のひとつの正解なんだろうなと一視聴者として感じています。たとえば、ゲーティアが正体を現すまでのソロモンの声ってふたりでしゃべっているんですよね。杉田智和さん(ソロモン役)と鈴村健一さん(ロマニ・アーキマン役)のふたりの声を合成している。それはゲームのテキストではわからない、アニメじゃないと体感できない表現だと思います。そういったアニメならではの最善の解釈を、アニメのスタッフのみなさんが持ちうる力を全て結集し、魂を削って作り上げています。ぜひ、この作品を存分に楽しんでいただきたいです。ちなみに、第2部の先陣を切らせてもらっているクリプターとしては、ラストに生き残っているカルデアのメンバーを見て、複雑な気持ちになってしまいました。第2部をプレイされているマスターはそういう想像も膨らませてもらえると、より楽しめると思います(笑)。