『Fate/Grand Order -終局特異点 冠位時間神殿ソロモン-』
スタッフトーク付き上映オフィシャルレポート

全国劇場にて特別上映中の『Fate/Grand Order -終局特異点 冠位時間神殿ソロモン-』のスタッフトーク付き上映を、8月18日(水)に実施いたしました。上映後のスタッフトークには本作の監督を務めた赤井俊文さん、プロデューサーの黒﨑静佳さん、そしてスペシャルゲストとしてフォウ役・川澄綾子さんがサプライズで登壇しました。
そのトークイベントの模様をお届けします。

本編上映後に登壇した赤井俊文監督、黒﨑静佳プロデューサー、川澄綾子さん。
スタッフトークの冒頭で、会場の皆さんから大きな拍手を贈られた赤井監督は「一生分の拍手をもらった感じです、ありがとうございます。」と答え、『FGOソロモン』の制作を終えて、「TVアニメ『FGOバビロニア』のシナリオ会議を始めた頃から数えると約4年経っているので、ようやく終わったなという気持ちです。『バビロニア』の制作が終わったら『ソロモン』に取り掛かる前に少し休んで温泉旅行でもと思っていたのですが、コロナの影響で叶わず……。でもどこにも行けないなら働けるよね、と間を置かず『ソロモン』の制作に取り掛かったので、悔しい気持ちを作品にぶつけました。いざ全ての制作が終わると、達成感でいっぱいで、実は一人で自分自身を褒めました」と、TVアニメ『バビロニア』制作時からの長き日々を振り返りました。
そして、『ソロモン』を原作スマートフォン向けアプリゲーム「Fate/Grand Order」の6周年にあわせて劇場での特別上映にいたった経緯について、黒﨑プロデューサーが「当初は、TVシリーズ『バビロニア』の特別放送として60分尺での放送を予定していたのですが、シナリオを制作している中で60分の尺には収まらない量に膨れ上がって……。また、このようなカロリーの高い作品を制作するのであれば、劇場の大きいスクリーン、そして5.1chの音響で観て頂きたいという思いが高まり、FGO6周年という記念すべき日に特別上映をしようという流れになりました」と明かすと、「7月30日という大事な日に間に合ってよかったです」と赤井監督が安堵の笑みを浮かべる場面も。
また、川澄さんは本作が劇場での特別上映になったと知った際の心境について、「TVで放送された『バビロニア』も非常にクオリティが高く、赤井監督はじめ『バビロニア』を手掛けたスタッフさんが作る作品はぜひ大きいスクリーンでご覧いただくべきだと思っていたので、素直に嬉しかったです」と答えました。
川澄さんのコメントを受け、黒﨑プロデューサーから「2019年12月に実施した『バビロニア』 の一挙上映のトークショーに登壇された岩浪(美和)音響監督と、音響効果の小山(恭正)さんからも、『音響的な面でも、これは劇場でやりなよ!』と言われていましたよね」と問いかけられると、赤井監督は「TVシリーズでも毎話効果音をつけるのが大変だと言われていました(笑)。なので、劇場のスクリーンでも観られる作品になるのではと、自分自身も思っていました」と答えました。

そして、トークテーマは本作に脚本原案として関わっている奈須きのこ先生のお話へ――。
「制作のスタート地点から数えると、シナリオは三十稿くらい制作していると思います。内容を試行錯誤していく中で、ゲームをプレイしている皆さんはお分かりになるかと思うのですが、物量が多く、映像として描くのがとても難しい作品だと感じました。藤丸の立ち位置やソロモンやゲーティアの描き方など原作の設定にも深くかかわる様々な議論があり、これは奈須さんのお力を借りるしかない!となりましたね」と当時を振り返る黒﨑プロデューサー。赤井監督は、「奈須さんと打ち合わせをさせていただいて、シナリオの中で何が必要で、どう描いていくかという方向性を決めていきました」とも答えました。
原作ゲームにはない映像ならではの描写で、奈須さんのアイディアで生まれたものはありますか?という問いかけに、赤井監督は「レフの刃を藤丸の左手で防ぐというアイディアは、奈須さんがおっしゃっていたので、藤丸の礼装のデザインを考える際、左手に何かつけなきゃと思いました」と答え、黒﨑プロデューサーも藤丸の礼装に関して「最終決戦用に新しく礼装があった方がいいという話になり、奈須さんがマスターの神経を疑似魔術回路としてサーヴァントの召喚を可能にする…という礼装の設定を考えてくださったんです。その設定をもとに、赤井監督にデザインを起こしてもらいました」と重ねます。
藤丸の礼装に関してのエピソードを受けて、川澄さんからも「終盤に、たった一人きりになって満身創痍になりながらゲーティアへ戦いを挑むシーンで、藤丸の礼装の安全弁から翼のように光が溢れるところが本当にかっこよかったです!」と熱い感想が飛び出すと、「あの演出はかなり勇気がいりました。終盤の藤丸は命を懸けていて、それを表情だけで描くこともできたと思うんですが、より演出を盛り上げるために追加しました。怒られるかもと思ってこそっと入れたのですが受け入れてもらえてよかった……(笑)」と打ち明けた赤井監督。
 自身もFateシリーズの大ファンであるという黒﨑プロデューサーが「藤丸の召喚の詠唱などは私たちでは考えようがないので、『ソロモン』のために作られた詠唱を奈須さんからいただいたときは、胸が熱くなりました。藤丸を演じてくださった島﨑(信長)さんもきっと、『Fateの主人公!』というお気持ちになって熱く演じてくださったと思います」と制作秘話を明かすと、川澄さんは「信長くんは『すっごく嬉しい!』と言っていましたよ! あのシーンを収録した後、『僕、告げる――って言いたかったんですよね……』と話していて、私ですら言ったことないのに!と思いました(笑)」と、セイバー役をはじめ多くのサーヴァントを演じる川澄さんならではの収録時の思い出が語られました。
そして、トークテーマは川澄さんが本編をご覧になって、赤井監督・黒﨑プロデューサーに聞いてみたいことへ。
今回の登壇にあたって改めて本編を見返したという川澄さんからは、「『ソロモン』で登場したサーヴァントは総勢何騎なんでしょう……? 本編を観ながら一生懸命数えた私の答えは73騎だったのですが、どうですか?」という質問が。赤井監督は「僕は80騎後半だと思います」と予想。黒﨑プロデューサーから「マシュを除くと105騎です」と正解が告げられると、予想を上回る数に川澄さんからは驚きの声が上がりました。
「アニメの制作においては、まずシナリオに登場するサーヴァントの記載があり、そのシナリオをもとに赤井監督たちに絵コンテを作っていただいて、絵コンテでもどのサーヴァントが登場するなどの記載があるんです。基本的には絵コンテに描かれている内容を決定版として映像にも反映するのですが、今作は映像に色がついてほぼ完成という段階で見てみたら、絵コンテよりもサーヴァントが増えていたんです。制作の都合上、シナリオや絵コンテからキャラクター数が減ることはあるのですが、増えることはまずないんですよ。編集の現場で、スタッフ皆で間違い探しみたいになってしまって(笑)」と黒﨑プロデューサーが制作現場の事件を振り返ると、赤井監督から「それは、FGOの大ファンである総作画監督の浜(友里恵)さんのおかげです。ある日の深夜に制作スタッフから『浜さんがサーヴァントを増やしたいと言っています』とメッセージが来て。僕は『了解』とだけ返したんですが(笑)、その後浜さんから、このシーンでこういうサーヴァントを増やしたいという詳細な提案を頂き、お願いしますと伝えました」と経緯が明かされました。
お二人の裏話を受けて、川澄さんからの「登場するサーヴァントの選定理由も気になります」という質問に、赤井監督は「奈須さんとの打ち合わせの中で、終局特異点の舞台に合ったサーヴァントを出したいという流れになりました。例えばアレキサンダーだとブケファラスで空間を駆けられるね、といった感じで」と回答。黒﨑プロデューサーも「最終的には、自分自身が藤丸だったらこのフィールドで勝つためにどのサーヴァントを召喚して戦うだろうと打ち合わせをしていました。ヴラド三世[EXTRA]だと広範囲攻撃ができるよね、など」と重ねました。お二人の答えを受け、川澄さんからは「意外だなと思うサーヴァントもいましたが、おかげで自分があまり使ってこなかったサーヴァントの宝具演出のかっこよさに気づけて、よりいろんなキャラクターを好きになりました」とゲームにも深く携わる川澄さんならではの感想も飛び出しました。
トークイベントも終盤となり、川澄さんからは「終局特異点が映像になると聞いた時、あのような壮大な空間でマシュはどうやって戦うんだろうと楽しみにしていたのですが、盾をパラグライダーのように使って滑空するなど立体的に動くシーンを観て、アニメーションとしてすごいなと改めて思いました。盾で戦うって表現としては難しいと思うのですが、防御以外にも滑空や攻撃に使ったりと、それもこの場面に合わせたバトルシーンを組み立てたんですか?」とバトルシーンの演出に関しての質問も。赤井監督からは「そんな部分まで気付いていただけて嬉しいです。川澄さんがあげてくださったシーンは、三浦(貴博)さんというFateシリーズのアニメを多く手掛けたスタッフさんが絵コンテを担当してくださったんですが、広い舞台を使った派手な戦闘も見せたいと相談したところあの絵コンテをあげてくれました。本当に感謝しかないですね」と語りました。
まだまだ話は尽きないなか、最後にお三方よりメッセージをいただいて、トークイベントは幕を閉じました。

「まだ劇場での上映は続きますので、お時間ありましたら、ぜひ何度も足を運んで頂いて、本当に登場したサーヴァントが105騎いるのか確かめていただくのもいいかもしれません(笑)。本作を引き続き応援していただけると嬉しいです」
(黒﨑プロデューサー)

「なかなかこれまで監督とじっくりお話しする機会がなかったので、今日は本当に嬉しかったです。観れば観るほど制作された皆さんに聞いてみたいことが増えていく作品で、ファンの皆さんもゲームをプレイしたり、アニメを観たりすることで新しい発見が沢山あると思うので、またぜひこのような機会があればいいなと思います」
(川澄さん)

「7月30日というゲームの記念すべき日に劇場での特別上映を迎えられて、そして今日はトークイベントにも足を運んで頂き感謝しかありません。自分の集大成と言うには早いかもしれませんが、魂を込めた作品になっています」
(赤井監督)